個人事業主になる為には

個人事業主になる為には

働き方が多様化している昨今、これから個人事業主としてやっていこうと考え始める方も多くいらっしゃると思います。

こちらでは個人事業主になる際のメリットや必要な手続き・届出などについて解説します。

基礎知識として、ご活用ください。

個人事業主のメリット

■仕事を選べて、やった分だけ報酬が得られる

会社員とは異なり、個人事業主は自分で仕事を選ぶことができます。

自分から仕事を取りにいかないと報酬を得ることはできませんが、高単価な案件を取ることができれば、決まった給与をもらう会社員よりも早く収入を増やすことができるかもしれません。個人事業主は実力が報酬に反映されやすくなります。

どのくらいの量の仕事をするのか、どのくらいの時間仕事をするかも自分次第ですが、次の仕事につながる質も大事にしなければなりませんね。

■法人に比べると開業の手続きが簡単

個人事業主は、法人に比べて会計・税金などの処理が簡単です。

法人の場合は開業するにあたり登記の必要があり、定款の作成などさまざまな手続きを踏まなければなりません。一方、個人事業主であれば開業届の届出だけで完了します。

事業の追加や変更時、法人の場合は定款の変更が求められますが、個人事業主であれば自由に変更できます。また、法人は会計処理が複雑になったり、社会保険や年末調整などの手続きに追われたりしますが、個人事業主の場合は比較的簡便に済ませることができます。

加えて、もし廃業することになっても法人の場合は清算手続きを含めた各種手続きが必要なのに対し、個人事業主は廃業届を出せば手続きは完了します。このように、法人と比較して個人事業主は各種の手続きを簡単に行うことができるのです。

■青色申告特別控除が受けられる

個人事業主として開業届の届出を済ませ、青色申告承認申請書を提出することで青色申告の特別控除を受けることができます。青色申告特別控除では、最大65万円の控除を受けることができ、節税につながります。

※2020年度から最大65万円の特別控除の対象になるためには、e-Taxによる電子申告、または電子帳簿保存が必要となっています。こちらの条件を満たさない場合の控除額は最大55万円になります。

個人事業主になる際に必要な届出

個人事業主になるには、開業届の提出が必要です。ただし、青色申告特別控除を受けるためにはほかにも提出すべき書類があります。こうした個人事業主になるにあたって必要になる届出について紹介します。

開業届

個人事業主になるために重要なのが、「開業届」です。開業届を提出していなくても、個人事業主を名乗ることはできますが、正式に認められるためには税務署へ「開業届」を提出しなければなりません。

開業届の提出によって青色申告ができるなどのメリットがあるため、必ず手続きを済ませておきましょう。

開業届の用紙は、国税庁のホームページでダウンロードできます。あるいは、所轄の税務署で受け取ることも可能です。

開業届には、納税地、税務署名、提出日、氏名、電話番号、生年月日、マイナンバー、職業、屋号、住所、所得の種類、開業日、届出の区分、事業内容などを記載します。

また、開業届を出す際は念のために控えを取っておきましょう。別の手続きで必要になる可能性もありますので、コピーを保管しておくことをおすすめします。

青色申告承認申請書の提出

青色申告特別控除を受けるには、開業届に加えて「青色申告承認申請書」の提出が必要です。

提出期限は申告する年の3月15日までが基本で、1月16日以後に事業を開始した場合は、2ヵ月以内に税務署へ提出する必要があります。青色申告承認申請書は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

また、青色申告特別控除を受けるには、複式簿記により記帳した帳簿、貸借対照表・損益計算書を用意する必要があります。簡易簿記の場合は青色申告を行っても、10万円控除になってしまうので注意してください。

その他の届出の提出

個人事業主に必要な届出は基本的に開業届や青色申告承認申請書になりますが、その他にも必要になる場合がある届出があります。

■青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書

配偶者及び親族に払った給与を必要経費として算入する際に必要となる届出です。対象となるのは、青色申告者と生計を一にする配偶者その他親族で、その年の12月31日時点で年齢が15歳以上の方です。

■源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書

本来なら翌月10日までに納付しなければならない源泉徴収税を従業員10人未満の小規模な会社の場合、半年ごとの納付に変更できる届出です。

■給与支払事務所等の開設届出書

青色事業専従者も含め、初めて従業員を雇用して給与を支払う場合に税務署へ提出する必要がある届出です。提出期限は、従業員を雇用してから1ヵ月以内です。

個人事業主になったあとの手続き

開業届など各種の届出の提出を終えて、個人事業主となったあとも必要な手続きがあります。

■国民健康保険・国民年金への加入※当協会加入の場合は不要

個人事業主になったら、必ずしなければならないのが、保険や年金の手続きです。

退職後、14日以内に国民健康保険と国民年金への加入が必要になります。

しかし、会社の健康保険を任意継続することも可能です。その場合は退職後20日以内の手続きが必要で、最長2年間の期限が付いていましたが、2022年1月から2年の縛りはなくなり、本人の希望により任意で脱退できるようになりました。

厚生年金から国民年金へ切り替えると会社員と比べて将来もらえる年金が減ることになります。そのため、将来に備えて個人型確定拠出年金(iDeCo)などの利用も検討しておきましょう。

■小規模企業共済への加入※当協会加入後は加入できませんので、加入前にお手続きを!

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が利用できる共済制度で、独立行政法人中小企業基盤整備機構によって運営されています。

自分で決めて支払い、全額が所得控除の対象となり、廃業時には共済金を受け取ることができます。そのため、退職金の代わりとして活用することが可能です。

ただし、240ヵ月(20年)未満で任意解約した場合、受け取る解約手当金の額は掛金合計額を下回ってしまいます。

必ずしもメリットがあるものとはいえないため、加入すべきか慎重に判断しましょう。

■事業用の銀行口座の準備

事業を始めるにあたって、銀行口座の準備は重要です。屋号を含めた銀行口座を持っているほうが取引先からの信用を得やすくなります。
また、個人事業主になると自分で経費管理を行う必要があるため、プライベート用と事業用の口座が一緒になっていると、どれがプライベートでの出費で、どれが事業による出費なのか区別しづらくなります。区別し管理を楽にする為にも事業用の口座を持つことをお勧めいたします。

■確定申告の準備

確定申告とは1年間の所得にかかる税金を計算し、税務署へ申告・納付することです。個人事業主が行うべき重要な手続きとなります。確定申告をスムーズに行うためには、さまざまな準備が必要になります。

青色申告を行う場合、まずは期限までに開業届と青色申告承認申請書の提出を済ませます。そして事業用の銀行口座を用意し、経費管理を行いやすい状態にします。

次に、事業用のビジネスカードを作っておきましょう。ビジネスカードがあれば、各種のサポートが受けられ、引落口座を事業用の口座に設定すれば経費管理がしやすくなります。

さらに、帳簿付けのためにクラウド型経費精算サービスや会計ソフトを導入しておきましょう。ビジネスカードと連携させて管理すれば自動的に仕訳を行うことができます。日々の帳簿付けがこれでかなり楽になるはずです。

会社を辞めて個人事業主になる場合にやっておくとよいこと

個人事業主は信用が低いと判断される傾向があり、ローン商品やクレジットカードの審査に通過しにくくなる可能性があります。会社を辞めて個人事業主になる場合は、会社員であるうちに住宅ローンなどのローン商品、クレジットカードに申し込んでおくと良いでしょう。
また、いずれ必要となりますので、退職する際には雇用保険被保険者証、源泉徴収票、年金手帳も忘れずに受け取り、保管して下さい。